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いや、今日は終演後にとても嬉しい事件が起こった
しかも、サプライズで
尊敬する先輩でもあり、大好きな友人でもある俳優の鈴木壮麻さんが、ふいに今、僕が出演している歌舞伎座の楽屋を訪ねてくれたのだ
びっくりして話を聞いてみると、今月は新橋演舞場に出演しているとの事
手紙とかではやり取りはしている物の、逢うのは数年振りだったので、テンションが滅茶苦茶上がって、興奮のあまりに抱き合ってしまった
とは言っても、僕自身は自分のKindleに壮麻さんの歌を落としていて毎日の様に聴いているので久し振りな気がしないのも事実
うん、しかし、それにしても懐かしくて嬉しかった
近々また、食事しながら酒を酌み交わそうとの約束をして別れた
僕が独身に復帰して時間にも余裕が取れるから、タイミングを合わせて早い内に実現させたいね
ちょっとの時間だったけれども、途轍も無く幸福だった
壮麻さん、有難う
普段、僕の日記を読んで性分を知ってくれている人達からすると、今、僕がどれだけ有頂天になっているか分かって貰える事だろう
こう云う幸福がたまに、ふと訪れる可能性が僅かにでも有ると思うと、まだもう少しだけ死ぬには勿体無いと感じる物だよ
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僕は兎角、昔から滅茶苦茶先輩に好かれない、可愛がられない性質の方の後輩だった
いや、「だった」ではない
現在進行形でもそうである
つまりは「だった」ではなく「だ」が正確かな
殊、人に憎まれる、嫌われるのも才能の一つだと言うならば、それについては僕の中で唯一、天賦の物なのかも知れない
全然、欲しくなかった才能だけれどもな
「三國志」に登場する魏延文長の如く、顔に“反骨の相”が顕れている事も有るだろう
また、これまでに形成されて来た性格に因る部分が大半なのだろうし「仕方無い」と、諦めてはいるが、理由は「何故」と、嘆きたくなる位に理不尽極まりない物から、「そりゃそうだ」と、自分でも思う程に至極当然の物まで数限りない
一つ一つ挙げて行ったら切りが無いので、それはこの場では控えておく
だから、後輩達にはこう云う、僕みたいな人間には間違ってもなって欲しくないし、僕だけは絶対に見習っちゃいけない、と、常日頃から切にそう願っている
末頼もしく心強き後輩達も、頼もしくなく心強くもなく全く期待出来ない後輩達も、全ての後輩達には、お客さんは勿論の事、先輩方からも愛される歌舞伎役者になって貰いたい
心からそう思うのだ
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今日はさっきまで、久々に学生時代の数少ない仲の良かった友達
僕の主治医、工場の専務、一流企業戦士
その三人と、数年振りに酒を酌み交わしていた訳だが
お互いに皆、人生の浮き沈み、紆余曲折を味わっていたんだな
憎しんでいた者やら、覚えてもいない者やらと、生き長らえていようが野垂れ死んでいようが全くどうでも良く興味が無い大半の同級生の人々を省いて、友達だからこその温かい絆を感じた
僕がチョイスした中華料理屋さんも皆、大いに気に入って満足してくれた様だ
それも嬉しいね
兎も角、今晩の三人との友情と酒と飯は、素晴らしく心に沁みる味わい深い物であった
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今月、鏡味仙三郎先生に大神楽を何回か稽古をして頂いているのだが
その都度、必ず強烈な筋肉痛に襲われる
大神楽と日本舞踊、当たり前だけれども、全く使う筋肉が違う
仙三郎先生を始め、プロは何と言う事も無く簡単に技を決めて、気軽に演っている様に観えるし、身体もそんなに使っていない様にも思える
しかし、それは話にならない大間違いだ
稽古してみると良く分かる
想像の遥か上を行く身体の酷使である
やっぱり、“観る”と“演る”では大きな違いだ
仙三郎先生にも「手慣れるには毎日、道具に触る事」と言われた
とは言え、芝居よりも慣れていない分、扱いが難しい
改めて、何の苦も無く飄々と技を披露されるプロの方々に敬意を評する
そして、歌舞伎界一
いや、日本一不器用と名乗っても過言ではない僕に飽きず、呆れず、見放さず、稽古を付けて下さった仙三郎先生と、それに付き合って下さった息子さんの鏡味仙志郎さん、御弟子さんの鏡味仙成さんに心から感謝している
改めて御礼を申し上げたい次第
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風邪っ引きではない筈なのだが、此処数日の寒さと花粉とで昨晩から鼻水が止まらず、一日一回一錠の筈の鼻水止めを夕方からこの時間までで鼻水が止まるまで十数錠飲んだら、やっと効いて来たと思いきや、今度は効き過ぎているのか、流石に鼻の奥が滅茶苦茶カピカピに乾いて痛い
朝までには薬の効きが治まってくれればいいのだけれど
今晩は痛み止めを飲んで、ヴェポラップを胸に塗ってから寝るか
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さっき、歌舞伎座にて来月の歌舞伎興行、猿若祭二月大歌舞伎の今日の稽古が終了
で、今、一つ用事の為に新幹線に乗って大阪に向かっている
一泊して、明日も朝からまた同じその用事
それを終わらせたら急いで新幹線で東京に戻り、直接、歌舞伎座に行って僕待ちでまた稽古
こっちも明々後日には既に初日を迎える中で、ちょっとした強行軍な気もするが、せめては雪やトラブルやらで新幹線が遅れたりしない様に願いたい物だ
全く、この急々の行程じゃ、独身復帰後初の大阪だって云うのに、夜は酒飲むどころか飯にすら有り着けるかどうか覚束ない侘しさだ
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去年のクリスマスに我が家に買ったのだが
ルンバの働きが素晴らしい
朝、仕事に出掛ける時に起動させると、夜に帰って来た時には隅々までちゃんと綺麗にされている
あまり期待せずに買ったのだけれど、流石は十万円以上するだけの最新機種だけの事は有る
毎日の掃除の手間を考えれば、御値段以上の価値の強者
これはもう、ルンバ等と呼び捨てにはしておけないな
ルンバさん
ルンバ様
いや、ルンバ先生と呼んでも過言ではない
後は故障しない様に祈るだけだ
掃除最高
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この立廻りも今日で最後か
寂しくもあるな
僕も坂東亀寿さんも今後、何回演れるか分からないからね
こんなに息の合う、信じるに足る相方はそうそう巡り逢える物ではない
泉水で彼と闘うのはこれが一生で最後だろう
そのつもりで名残を惜しみながら今日、千穐楽の舞台を勤めよう
さて、華々しく死んで来るか
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今日はまさに赤穂浪士四十七士の討ち入りの日だな
その日に敵方の高家(吉良)側の用心棒を演じていると云うのも何ぞの因縁か
「仮名手本忠臣蔵」では今月、僕が演じている小林平八郎は立廻りの場面にしか現れない為、どの文献や資料を調べても、どう云う肚で女物の着物をかぶって登場するのかは殆ど記されていない
ましてや、史実上の上杉家臣、小林平八郎央通とは年齢から立ち位置、全てに於いて変わっているので、史実を基本にする事も難しい
「仮名手本忠臣蔵」中の小林平八郎は、吉良家もう一人の剣豪、清水一学とのミックスでキャラクターが想像されたと考えるのがいい
だから、自分の今までの歌舞伎の経験と想像力、そして「自分だったらどうするか」を思いながら、一番肚に落ち、納得出来る気持ちと結論を練り出すしかない訳だ
今月のプログラムに僕は、あの格好をしているのは「逃げようとしているのではなく、養子先(史実で言う所の上杉家)等へ救援の要請に向かうつもりだったのだろう」と、推察した
稽古から初日に掛けてそのつもりで勤めて来た
だが、演っている内に日に日に考えが変わって行った
はっきり言ってあの討ち入りは、討ち入られた時点で勝敗は決している
小林平八郎程の腕に覚え有る達人がそれを察せぬ筈は無い
だったら、彼は一発逆転の博打を打とうとしたのでは
つまりは大将首、大星由良之助良兼
悟られぬ様に女の着物で大星由良之助に近付き、生命を奪えば残党の士気は落ち、討ち入りは瓦解するのではないか
それを狙ったのではないか
大星由良之助を狙い探している内に他の浪士に正体を明かされ、その後はただ武人の本能として闘いを楽しんだ後、己の死ぬべき所で納得して死んで行ったのではないか
そうでないと最後に、突き出された槍を自ら腹に抉り立てる道理に辿り着かない気がするのだ
僕の中では今、その考えが一番、しっくり来る
今は毎日、そう云う肚で小林平八郎を演じている
これから観て下さるお客さんには、そう思って観て欲しいと思う
そして、僕がそう思って演じている事をあの五分前後の短くも激しい闘いの中で、お客さんに少しでも伝えられていれば本望である
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昨日は昔、恋人だった女性に誘われて、自分の公演が終わった後に芝居を観に行って来た
劇場はアトリエヘリコプター
岩井秀人さんが主宰する劇団、ハイバイの「ワレワレのモロモロ・東京編」
ハイバイの舞台を観るのは昨日が初めて
とても楽しく観た
声を出して笑わせて貰った
今回の公演は八本の短編からなるオムニバスで、出演者九人の内、主宰者、劇団員を含む八人がそれぞれ一本ずつ責任で作品を書いていると云うのも面白い
その中でも僕が特に惹かれたのは「いとこの結婚」、「深夜漫画喫茶」、「『て』で起こった悲惨」の三本かな
出演者九人が皆、違う個性が光って生き生きと、尚且つ、客席に向かって分かる様に投げ掛けてくれていたので飲み込み易く、途中十分の休憩を含んで二時間四十分弱の長丁場なのに、全く飽きさせる事無くあっと言う間に時間が過ぎて行った
TVでは良く観る荒川良々さんの芝居を初めて生で観られた事も嬉しい
岩井秀人さんの笑いを散り嵌めながらも、何処からともなく少しの陰が漂って来る構成、演出
平原テツさん、師岡広明さんと云う二人の俳優さんにも興味を引かれた
ハイバイ共々、今後は注目して、また次の公演も楽しみにしよう
アトリエヘリコプター、初めて訪れたんだけれども、お客さん一杯だったし、小劇場らしい雰囲気の有るいい劇場
新たな発見
新たな出逢い
うん、有意義な時間を過ごせて、いいリフレッシュになったな
今日からまた、自分が演じる為の演る気とエネルギーを貰えた気がした
連れて行ってくれた昔の恋人に感謝だ
公演は今月の二十三日まで続くとの事
「今年最後の演劇は何を観ようか」と、お迷いなら、国立劇場大劇場の「仮名手本忠臣蔵」三ヶ月連続完全通し上演第三部か、アトリエヘリコプターのハイバイ公演「ワレワレのモロモロ・東京編」のどちらかを強くお勧めする
いや、日に依っては昼の十一時から「仮名手本忠臣蔵」、夜十九時から「ワレワレのモロモロ・東京編」と、観劇のダブルヘッダーをする事も可能だから、それを一番プッシュしたい
最後に、話を変えて少しだけ
今日は娘の十三回目の誕生日
一昨日、一緒に食事はしたけれど、当日に直接「御目出度う」と言って祝ってあげられないのが切ない
せめては、彼女が楽しく素敵な誕生日を過ごせる事を心から願っている
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