歌舞伎役者
四代目尾上松緑
日本舞踊家
六世藤間勘右衞門
己が吐き出す為だけの
取るに足らぬ残日録
無断の転載や
スクリーンショットの盗用等
断じて願い下げる
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昨日、歌舞伎座に於いての十一月の歌舞伎公演が初日を迎えた
今月は初世松本白鸚の叔父さんの追善の興行である
僕は義太夫「寿式三番叟」の三番叟、「一谷嫩軍記」の堤軍次、「御存鈴ヶ森」の幡随院長兵衛の三役を演じている
三番叟は去年の九月末に素踊りで藤間勘十郎さんと踊った役
今回は勿論、衣裳付けで市川染五郎さんと踊る
市川團蔵さんが舞台稽古で言ってくれて、僕も全くそう思うのだが、長唄「舌出し三番叟」等とはまた違い格調が要る踊りなので、派手な振りだからと云ってあまりバタバタと飛んだり跳ねたりはしゃいだりせずに、余裕を持って冷静に自分自身も楽しむつもりで挑みたい
翁の片岡我當の小父さん、千歳で坂東亀寿さん、中村歌昇さん、中村米吉さんも登場する豪華ヴァージョンの奴だ
そう言えば歌昇さん、知っていたけれども遅ればせながら御婚約御目出度う
先に結婚と云う物を体験した先輩として、家庭を巧く回して行くコツは、「ひたすらの我慢」、そして、「主導権を絶対に相手に渡さずに手綱を断じて緩めない事だ」との助言だけは先にしておきたい
さて、軍次を勤めるのは何年振りだろうか
熊谷次郎直実の忠臣と解釈している
出番は少ないが好きな役
前回も松本幸四郎の叔父さんの熊谷で、その時に普段から仲良く可愛がって下さっている中村又五郎の兄さんに教えて貰った
また、その又五郎の兄さんも紫綬褒章授章、重ねて心からお祝いを申し上げる
親子揃っての慶事、喜ばしい限りだ
話を戻そう
僕は熊谷を本役で演じた事が無い
ただ、代役として引き受けた事は有るので、後ろに控えていても以前とは全く違う感覚で細かい部分にも気が付けるのではないか
この機にきっちりと隅から隅まで勉強したいと思っている
そして、難役、幡随院
これは初役
幸四郎の叔父さんに教えて頂いているのだが、兎に角、難しい
何がって、“何もしない”と云う事の難儀さ
高麗屋の叔父さんは事細かに教えて下さるのだけれども、その仰っしゃる「落ち着いて」、「力むな」、「動きを少なく」、「どっしりと」
“静の歌舞伎”と云うのが、去年も叔父さんに教わった「新薄雪物語」の幸崎伊賀守に相通じながら、また別の手強さが有る
やっぱり、今まで演じて来たのがアクティヴな役の方が圧倒的に多いから“ドンと構える”と云う事に間が持たず、恐怖さえ感じる事が有る
所詮、根っから大物じゃないからね、僕は
元来、丸顔で貫目の無い、安く陳腐ながらくたなので、稽古中から“江戸で一目も二目も置かれる大親分”の風情が全く出ずに四苦八苦
あまり、考え込み過ぎても逆に軽くなってしまうのかも知れないし、いい意味での慣れと吹っ切れが必要なのかも知れないな
叔父さんが言ってくれた「長兵衛を楽しく、気持ち良く演れる様になれ」と云う境地に辿り着くのはいつの日だろうか
いや、そもそも、辿り着けるのだろうか
この苦しみをエンジョイ出来る様にならないと、長兵衛の様な強敵にはなかなか敵わないんだろうね
ちなみに昨日の終演後、今年の俳優祭にて長兵衛を僕よりも先に演じている倅には「何か直す所やダメは有るか」とお伺いを立てた所、「大丈夫、結構」と云う有難い御言葉を頂いた
最後に
僭越ながら、染五郎さん、初役の初日の歌舞伎十八番の内「勧進帳」の武蔵坊弁慶
稽古中からちょくちょく様子は伺っていたが、当然ながら、昨日も裏から拝見していた
とても素敵だったよ

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