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本来なら今日は米子から神戸への移動日の筈だった
一昨日の高梁総合文化会館での公演が延期になり今日、無事に開催されたので、お客さん達に御迷惑と御心配はお掛けしたけれども一息は吐けた
それでも、日が変更になって来られなかったお客さんには「楽しみにしていて下さったのに申し訳無い」と、僕如きからでも一言、詫びは言いたい
そう云った訳で、今日の予定は大幅変更と相なり、朝、バスで鳥取県米子から岡山県高梁まで約二時間移動して、二回公演
終了後に、JRで備中高梁駅から岡山駅での乗り換えを経て新神戸駅に入る行程
一日で鳥取県、岡山県、兵庫県と三県跨ぐ事になった
座り過ぎで流石に腰が辛い
等と、弱音を吐いちゃいられないな
さて、米子と云えば、数年前に死んだ我が弟子、尾上辰巳の故郷である
祖父や父の弟子と云う人達ではなく、純然たる僕の弟子と云う意味では、歌舞伎に於いては一番最初の弟子であった
例え、どんなに気持ちは分かっても
どれ程の強い誘惑が有ろうとも
自ら死を選ぶのは断じて許されない
事だ
ろう
と、思う
ただ、如何に馬鹿な死に方をした馬鹿な弟子でも、愛する可愛い我が弟子であった事に変わり無い
奴とした芝居、立廻りを決して忘れる事では無い
だから、もし、移動日のままであったのならば、神戸に行く前に墓参りをするつもりだったのだ
しかし、台風と云う、人間には如何ともし難いアクシデント
僕は時間的に断念せざるを得なかった
仕方無い
奴の墓参りは次の機会まで取っておく事にしようか
今はただ、安らかに眠ってくれていればそれでいい
もう、糞っ垂れなこんな世の中の余計な事は考える必要は無い
ちなみに、辰巳のダイレクトの弟弟子であり、今や若い子達を纏めてくれている尾上緑は、尾上辰緑達と共にこの忙しい旅の中、時間を掻い潜って墓参りをしたそうだ
辰緑も緑も、辰巳にはまた特別な思い入れも有ったろうし
彼等には彼等の絆も有るからね
行けなかった僕の分も良く行ってくれた、と、思う
辰巳、愛されてるじゃないか
今でも
羨ましい位だ、馬鹿野郎
さて、一方で現実世界に生きている人間の方はやる事山積で大変だ
先ずは、明日の神戸文化ホールに気持ちを向けてね
この旅も後半に入って来た
今の僕を辰巳が見たら何と言うだろう
奴は相変わらず飄々としているのかな
ホテルに着いたらアルコールで身体を清めようか
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