朝から夜までは仕事、深夜は酒と、殆ど家に居ず夫としても父親としても責任を全く果たしていないと言われても仕方の無い僕としてはどうしたら良かろうかね
取り敢えず明後日が千穐楽な訳だし、今月の興行が無事に終えられたら、来月は娘孝行をして御機嫌取らなくてはいけないな
前田智徳選手、左手首骨折か
これでしばらく、プロ野球の楽しみが全く無くなったな
勿論、一刻も早く完治させて貰いたいのは山々だが、傷だらけになりながら一人で闘って来た今までのあの野球人生を思い返してみると、能天気に「直ぐにグラウンドに帰って来て欲しい」なんて言う事は無責任過ぎて、軽々しく言ってはいけない様な気すらしてしまう
黙って事態を見守るしか、一ファンの僕には出来ない
しかし、口にも文字にもしたくないがもしも万が一このまま、なんて縁起でもない事が起きたら、僕は恐らくはもう今後一生プロ野球に熱狂する事は無いだろう
勿論、面識等無くただ一方的に片想いに近い感情で憧れ続けているだけだが、「誰に何を言われても己の敵は己、ただ信じる心を貫いて行くだけ」と云う求道の魂を背中で教えてくれた、僕が尊敬している数少ない人物の一人だからな
満身創痍でも理想を求めひたすら足掻き続ける彼の孤高の姿は、僕の様な何の取り柄も無い駄目人間にはいつになっても届く事が叶いそうにない高みの極致だ
あまりにも眩し過ぎ、美し過ぎ、格好良過ぎる
今現在、尾上松緑一門と云うと事務方やスタッフを除いた歌舞伎役者は僕と息子の左近
そして、扇緑、寿鴻、松太郎、緑三郎と云う祖父、先々代松緑の弟子
父、先代辰之助の弟子である辰緑
そして、僕自身の弟子のみどり、松男と云う面子である
僕には辰巳と云う弟子も居たのだが、彼は一昨年に若くして身罷ってしまった
最初の弟子だったし年も近く心を許していたので、その時は口が利けない程の衝撃だった
今でも彼を思い出す事は多々有る
だが、時間と云うのは過ぎて行き、我々未だ生命を所持している生物は不本意ながら誰一人例外無くその流れに乗って生きて行かなければならない
明日の新しい歌舞伎座開場柿葺落公演の初日から、我が一門に新しい弟子が入る
芸名は尾上松悟
二十二歳の若き家族である
彼もこの道と決めたからには「もう、自分にはこれしか選択肢は無い、他に逃げ道も無い、死ぬまでの一生の仕事だ」と云う強い覚悟を持って挑んで欲しいと切に思う
そして、彼が早く一廉の歌舞伎役者となれる様、今までの全ての門弟達と同様の御引き立てと御後援の程を宜しくお願い致したい次第だ
そして、僕の事は嫌いでも、尾上松緑一門の事は嫌いにならないで欲しい