歌舞伎役者
四代目尾上松緑
日本舞踊家
六世藤間勘右衞門
己が吐き出す為だけの
取るに足らぬ残日録
無断の転載や
スクリーンショットの盗用等
断じて願い下げる
450
昨日の夜は両内腿が同時に釣ると云う想定外のハプニングで動けない上に猛烈に痛くて、あわや、人生初の119番に電話を掛けようかと思う程にどうしていいか分からない状況に陥り慌てふためいたが、何とか今日、無事に歌舞伎座の五月興行、團菊祭の千穐楽の舞台を最後まで終わらせる事が出来た
分かっていたつもりだったけど、今回の興行は多分、肉体的よりも我慢の精神力の疲労の方が、自分が考えていたよりも遥かに身体の中に徐々に溜まって行っていたのだな
今は、行き着けの寿司屋で御飯を食べた後、馴染みの日本酒バーで自分の中の憎しみを洗い流し中
個人的には嬉しい報告も聞けたしね
祝杯も兼ねて、ね
いや、そんな事はどうでもいいか
話を変えよう
今日、皆さんに伝えたいのは、僕は以前から「自分こそが、自分のみが絶対の正義の化身である、正義の中でも最も正しく崇高な正義、正義の御旗は自分と共に」と云う、エゴイスティック且つ陶酔した考え方が大嫌いだ、と云う話
「誰の事か」って
そんなのはキャプテン・アメリカに決まっているではないか
大体、名前からしてキャプテン・アメリカだよ
“キャプテン”だよ
“アメリカ”だよ
何、全身に星条旗を散りばめてんだよ
「何だよ、何様だよ、お前がアメリカを代表しているのかよ、お前、アメリカその物なのかよ」と云うね
うん、その圧倒的な自信満々さが、清々しい程にいけ好かん
僕は断然、アイアンマン派
例え、多少、性格が歪んでいてもね
でも、自分に一番似ていると思うのはデッドプール
何てったって、奴は正義のヒーローではないからな
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確か、この間も日記に書いたんだよな
予想通り、僕如きが何を書いても言っても、そんなのは伝わらないんだよな
いや、所詮は他人
他人のする事、言う事等、犬の糞みたいな物だからな
自分以外の人間に何かを求める方が間違っていた
他人に期待するのが無駄
分かってはいるんだがね
でも、大切な事だから、もう一度だけ毒を交えて書いておこう
それぞれ一人一人を目視は出来なくても、特に歌舞伎は他の演劇より開演中の場内が明るい場合が多いからね
舞台の上に立っている側からも日々、客席サイドの出来、不出来は分かる物なのだよ
芝居中、遅れて来た癖に済まなそうにもせず、大きな肥満体をゆさゆさと揺らし、堂々と無遠慮に客席を割って入る者
芝居中、帽子を取らない者
芝居中、携帯電話を鳴らす者
芝居中、菓子だか何だか分からないが、ずっと袋をガサガサしている卑しい者
芝居中、知ったか振って解説でもしたいのか、大声で喋っている者
撮影しているフラッシュや赤色ライト
大概、全て確認出来ているよ
やっぱり、悲しいかな、歌舞伎座に来る人間には品が無く程度の低い客、多くなってしまったんだな
おっと、今、上の文章を読んだだけで癇に障った者
僕は「歌舞伎座に来るお客さんの全てが下品で身勝手だ」なんて事は一言も発していない
「歌舞伎座に来る中には遠慮もルールも弁えない馬鹿も≪一部≫居る」と、言っているのだ
冒頭の文章を読んだだけで不快感を覚えて、過剰に腹を立てた者
貴方達には少なからず歌舞伎座のスタッフ、松竹株式会社の人間、歌舞伎俳優、その他の全ての関係者のいずれかに対して、無意識にかも知れないけれど“そう云う事をしている” 覚えが有るから、たかが僕如きが宣った一言にそんなにエキサイトするんだよ
今、鏡を見てごらん
そんな貴方達には、下の言葉をプレゼントしよう
何度も口を酸っぱくして言っているが、先ずは分不相応にヒステリックに喚き中傷や仕返しを考える前に、己の下品さ、行儀の悪さを省みて改め、ちゃんと最低限度の常識位は弁える人間に進化しようとしてみる所から始めてみようか
そんな気、更々無い
最低限度のモラルすら守る気は無い
「権利は主張するけれど、義務を果たすつもり等、全く無い、お客様は神様だから何をしてもいいのだ」と仰っしゃるのであれば
行儀が悪く、しかも、それを意識さえ出来ない様な奴は歌舞伎なんか見に来るな
いや、演劇を見に行けば劇場に迷惑を掛ける
映画を見に行けば映画館に迷惑を掛ける
コンサートに行けばホールに迷惑を掛ける
食事に行けばレストランに迷惑を掛ける
食べ物を買いに行けばスーパーマーケットに迷惑を掛ける
飲み物を買いに行けばコンヴィニに迷惑を掛ける
雑誌を買いに行けば本屋に迷惑を掛ける
何をしても迷惑を掛けるんだから、手前の家、手前の部屋から二度と出るんじゃない
いや、どうせ、吐く一息、一挙手一投足、その度毎に誰かに迷惑しか掛けられないんだから、もう是非、死んで頂きたい
死ね
その方が、貴方達以外の全ての人間の為だ
勿論、斯く言う僕もそうしてくれた方が、安心して心置き無く芝居に臨める
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意見は意見として耳には入れるよ
だけれけども「お前の事を考えて、お前の為を思って」って云う言い方は非常に傲慢で、相変わらず何も変わっていないんだな」と、改めて再確認したよ
知らないかも知れないけど、僕は息子でも何でもないんだよ
衝撃の事実でしょ
でも、それが真実なんだよ
世話を焼いた事は有るとは言え、世話して貰った事は一度たりとも無い
仇こそ有れ、恩は何一つ無い
今までも、これからも、僕は自分の事は自分で決めて行く
他人の心配をするよりも先ずは、御自分の来し方を鑑みられた方がいいんじゃないか
僕は営業以外で彼等に極力、関わりたくなく、そう人生を過ごしているんだから
向こうにも出来るだけ
いや、全身全霊を賭けて僕の人生に関わらないで頂きたい
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個人的好き嫌いの話
例えば、小沢健二さんを“オザケン”
木村拓哉さんを“キムタク”
レッド・ホット・チリ・ペッパーズを“レッチリ”
マン・ウィズ・ア・ミッションを“マンウィズ”
アジアン・カンフー・ジェネレーションを“アジカン”
電気グルーヴを“電グル”
マンチェスター・ユナイテッドを“マンU”
マクドナルドを“マック”若しくは“マクド”
「銀河英雄伝説」を「銀英伝」
「ガンダム〜Gのレコンギスタ〜」を「Gレコ」等々
他にも色々と有るが、そう云う略し方、好きじゃないんだ
僕は中抜きして略さない
いつだか、随分と昔の話
多分、前の歌舞伎座で僕が一公演だけ出演した「Ninagawa十二夜」の初演の年だったかな
そう言えば、演出をされた蜷川幸雄さんは先日、亡くなられたね
千穐楽に蜷川さんには『君には“歌舞伎”と冠の付かない演劇のジャンルで出逢いたかった』との御言葉を頂いた記憶が有る
多分、色々な含みを込めての僕と云う(駄)役者の評価だったんだろう
至極、真っ当な御意見を頂いたんだと思う
それぞれ、様々な方角の利害、理想、現実、意地、政治、思惑、都合、予定から僕は去り
また、蜷川さんのフィールドでの御一緒と云うのも、残念ながら実現はしなかったが
慎んで、追悼の意を表する
話を戻そう
その「Ninagawa十二夜」初演の年の十月だったと思う
これまた、亡くなった坂東三津五郎の兄さんと片岡亀蔵さんと三人で、名古屋のカポネと云うバーで飲んでいた時かな
僕が「新皿屋舗月雨暈」を「魚宗(ウオソウ)」と言った時に三津五郎の兄さんに、叱られるまでは行かなかったけれども、ちょっと注意と云うか、助言を受けたんだ
『お前も歌舞伎役者ならそう云う略し方をするな、あの芝居を「ウオソウ」とか「魚屋(トトヤ)」とかって言いたがる奴は通振りたいだけの素人だ、本当にあれを演りたいと思っているなら、外題通りか「宗五郎」と言った方がいい、それと同様に「奥州安達ヶ原〜袖萩祭文〜」を「安達三(アダサン)」、「近江源氏先陣館〜盛綱陣屋〜」を「近八(キンパチ)」、「絵本太功記〜尼ヶ崎閑居〜」を「太十(タイジュウ)」、「曽我綉侠御所染」を「御所五郎(ゴショゴロ)」、「権三と助十」を「権助(ゴンスケ)」、「太刀盗人」を「太刀泥(タチドロ)」等も、あまり好ましくないね、演し物をする役者になりたかったら普段、演目に対する接し方から敬意を持ってちゃんと真っ正面に向き合うべきだ』と云った様な話だった
成程、その時に確かに脳天を撃ち抜かれた様にハッとしたよ
少々、潔癖過ぎるかも知れないけれど、何だか僕にはとても良く納得が行った話だったんだ
そして、何事にも真っ直ぐな三津五郎の兄さんらしいエピソードでしょ
だから、僕はそれ以来、芝居の外題は略さない様に心掛けている
その癖から冒頭の、人名や他の名称も中抜きで略すのが、何だか馴れ馴れしく小馬鹿にしてる感じで申し訳無く思ってしまい、気持ち悪くなっちゃったって話
最初にも断った通り、別にこれは僕の個人的拘りなだけで、誰に強制するつもりもない、ただ、それだけの話
とは言え、アルトゥール・アントゥネス・コインブラの事は“ジーコ”と言うかな
それから、子供の頃からの慣れで「ドラゴンクエスト」だけは、今でも「ドラクエ」と、どうしても略しちゃうんだけどね
こればっかりは三津五郎の兄さんには済まないが、まさに三津五
じゃない、「三つ子の魂百まで」って奴だな
さて、一昨日は盟友であり兄弟分でもある俳優の川本裕之さんが観に来てくれたし、興行の中日を迎えた今日はこれから、四王天又兵衛政孝と安田作兵衛国継と我が妹の桔梗と、一家中で焼肉だ
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さて、前々回、前回の日記でも書いた様に、今月は歌舞伎座に於ける團菊祭に出演している訳だが
今日は、その昼夜の間を縫って、藤間勘右衞門として国立劇場大劇場にて催されている「紫紅会」にも出演して来た
演目は清元「其噂桜色時〜身替わりお俊〜」、井筒屋傳兵衛と白藤源太の二役を早替わりで演じた
歌舞伎座にて「菅原伝授手習鑑」の終演時間が13時10分
化粧を変えて国立劇場大劇場に移動して「身替わりお俊」の開演時間が14時16分で、約1時間ちょっとの演目
終わったらまた、歌舞伎座に戻り、化粧を直して夜の部の常磐津「勢獅子音羽花籠」の開演時間が16時30分
そこからはまた早拵え、早拵えで「三人吉三巴白浪」、「時今也桔梗旗揚」と立て続け
いや、昨日、今日はなかなかハードで濃厚な分刻みの予定だった
さっき、今日の全ての仕事が終わり、今は一息吐きながら飲んでいる
「身体に疲れが全く無い」等との嘘は吐かないけれど、疲れが有る分、充実しているね
心地良い疲れだ
明日からまた、舞台に上がる活力になった
ところで、話は変わる
歌舞伎を観に来る人全員にお願いが有るんだが
前にも書いたと思うが
観劇のルールは是非、守って頂けない物かな
何故、必要最低限度のルールも守ろうとしない者が無くならないのか、本当に理解に苦しむ
開演中は携帯電話の電源を切って音を鳴らすな
開演中は帽子を取れ
撮影、録音をするな
手前が気をやりたいが為だけに芝居を打ち壊す様な気の違った嬌声を掛けるんじゃない
いいかい、大切な話だから、もう一回書くよ
開演中は携帯電話の電源を切って音を鳴らすな
開演中は帽子を取れ
撮影、録音をするな
手前が気をやりたいが為だけに芝居を打ち壊す様な気の違った嬌声を掛けるんじゃない
僕だけじゃなく、その加害者以外の全てのお客さん、関係者、出演者の迷惑、邪魔になる事なのだよ
延いては、その加害者が贔屓にしている役者にまで様々な損害が及ぶのだよ
どうして、そこに気が付かないか
「私様方は金を出して切符を買ってやってるお客様だぞ」と、客席で傍若無人にどんな振る舞いをしてもいいと云う話では無いんだよ
「お客様は神様だ」とでも思い上がっているのか
図に乗るなよ
勘違いはするな
“神”は“神”だったとしても所詮は“貧乏神”か“疫病神”か“死神”程度でしかないだろう
若しくは、せいぜい“便所紙”、“鼻紙”若しくは“塵紙”位が関の山だと思い知ったら如何な物か
僕自身は今まで、歌舞伎以外の演劇を観に行った時に、一度たりとも客席から携帯電話の着信音が響いた経験なんか無い
礼儀とマナーも守らず、弁えぬ分際で、知ったか振って見当違いも甚だしい御託宣と蘊蓄、脅迫や嫌がらせだけは忘れずにきっちりとなさって下さる
いい御身分だね
羨ましい
呆れを通り越す
そんな犬の糞には二度と劇場に足を踏み入れて欲しくない
歌舞伎なんか見るんじゃない
死んだ方がいい
死ねばいい
死ね
お金を頂いて観せる側には勿論、ルールが有るが、見る側にも多少なりのルールは有るんだよ
少なくとも、僕のファン、僕を応援して下さっているお客さんはそうでないと信じたい
そして、他の演劇のファンの方達から「何だ、歌舞伎の客層は品が無くて程度が低いんだな」と馬鹿にされない事も心から願っている
今のまま、礼儀もマナーも守らない一部の輩が客席を跋扈する様では、いつかはそう当て擦られる日が来ないとも限らないよ
もし、これを読んで腹が立った者が居たら、それは“身に覚えが有り、図星を指されたから腹が立った”って事なんだから、悔しかったら、くだらない仕返しや愚にも付かぬ屁理屈の言い訳を考える前に、先ずは客席での自分の素行を省みる事をお勧めする
書き方に嫌味が有るのは百も承知
別に僕だって今以上に嫌われるのを分かっていて、こんな事を書きたくて書いてるんじゃない
誰が好んで嫌われようとするものか
でも、どうにも我慢がならなかったから、今回は敢えて少しばかりの毒を含ませて書かせて頂いた

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目出度い
昨日、歌舞伎座での五月歌舞伎興行、團菊祭の初日が一先ずは滞り無く開いた
今日は二日目が順調に進んでいる
尾上菊五郎の兄さん、中村吉右衛門の叔父さんのお孫さんであり、尾上菊之助さんの長男であらせられる寺嶋和史さんの初御目見得も目出度いが、これについて僕が兎や角と嘴を挟むのは野暮と云う物なので、御祝いを申し上げて納めておいて、もう一つの目出度い事を紹介したいと思う
プライヴェートでも仲のいい長唄の三味線弾き、杵屋勝国修さんが、今月から名前を改めて二代目の杵屋勝輔さんとなった
非常に腕の立つ人だし、初代の杵屋勝輔さんは祖父ともとても縁の深い人だったので、僕にとっても二重に嬉しい話
幸い、今年の七月の公文協中央コース、松竹大歌舞伎で僕が出演する歌舞伎十八番の内「鳴神」の大薩摩は彼が弾いてくれるので、そこで全国の皆さんにも御披露が出来るからナイスタイミング
これを読んで下さっている皆さん、これからも今まで以上に勝輔さんの御贔屓、御引き立ての程を、僭越ながら僕からも偏えにお願い申し上げる
また、目出度い事の二つに便乗して、もう一つ、手前味噌を
今月から、我が一門に尾上松三なる門弟が加わった
若干、十七歳
今月は「時今也桔梗旗揚」に出演している
この若者にもまた、温かい声援を賜る様に、僕の事は嫌いでも、尾上松緑一門門弟達の事は嫌いにならないで欲しいとお願い申し上げる
そして、最後に寂しい話も一つ
これまた、我が一門の話
弟子の一人、尾上松男であるが
彼は元が日本舞踊の我が流派、家元藤間流の門弟から歌舞伎界に入って来た
今後の本人の目標で「日本舞踊の道をもっと勉強して行きたい」との事
歌舞伎役者としては今年の十二月までの行動
来年からは日本舞踊家一本で歩んで行く進路となった
彼の歌舞伎役者としての姿を目に留めておきたいと思われるお客さんは、タイムリミットがだんだんと迫って来るので、今後、存分に心行くまで彼を追い掛けてやって欲しい
とは言え、歌舞伎役者であろうが、日本舞踊家であろうが、彼と僕との関係は変わらないし、舞踊会等では恐らく、来年以降も彼の姿をこれまでよりも目にする事は多くなるだろう
その時には今までと同様に
いや、今まで以上に彼の事も応援してやって欲しいと、師匠として思う次第
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443
明日は歌舞伎座での五月歌舞伎興行、團菊祭の初日
只今、僕の関係している演目の稽古は全て終了
後はインターヴァルを取って、明日の初日を待つ
果たして、彼とは去年の十一月以来の共演となる訳だ
彼自身とは実に関係は良好で、稽古の途中にも楽しく軽口を叩き合う位の仲なんだが
彼のファンには嫌われている
もとい、彼のファン“にも”滅茶苦茶嫌われているからな
昼夜共にしっかりと組んでいるだけに、また、無記名での「縁起が悪いから一座してくれるな」、「醜くて目障りだから同じ演目に出るな」、「不細工なんだから組むな」等の脅迫状とかが届かないといいな
なるべく、目に入れない様に気を付けてはいても、あの手この手と、手を変え品を変える作戦が功を奏して、何かの偶然で視界に入ってしまったりすると、毎回に渡り経験させられて無理矢理、慣れさせられた気でいても案外、何度となく心が折られる物なのだよ
そう云う事をしないで下さると、当方としては舞台だけに集中出来るので、結果的には彼の足もなるべく引っ張らずに済む筈
伏してお願い申し上げる次第である
それだけが唯一、明日からの公演に対する恐るべき懸念事項
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