歌舞伎役者
四代目尾上松緑
日本舞踊家
六世藤間勘右衞門
己が吐き出す為だけの
取るに足らぬ残日録
無断の転載や
スクリーンショットの盗用等
断じて願い下げる
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髪を切らなきゃいけないと思って、用事を済ませた後、嫌々ながら街に出た

僕が使わせて貰っている美容室は割と盛り場近くに在るから、こう云う時期は浮かれた変なのが湧き出して来て、凄く迷惑な思いをするであろう覚悟はして、家を後にしたんだけど

あれ

今日はまだ、思った程は混んでいない様だね

と、言うか

これは逆に、東京から人が居なくなる、目出度くも有難いパターンの奴の方か

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今日は名古屋に於ける御園座四月陽春花形歌舞伎の千穐楽

最後まで勤めて今、東京への帰り道

新幹線の中でこの日記をつらつらと書いている

今月は舞台上で片岡愛之助さんと坂東亀蔵さんと絡む比率が多かった

個人的にも好きな犬飼現八信道と云う役

亀蔵さんとは普段からの相性も有る上に、しっかりと五分の芝居が出来たので嬉しかったね

愛之助さんとは本当に久し振りに舞台の上で真剣な喧嘩が出来て楽しかった

殊に「芳流閣の場」での二人の立廻りは、自分でも息が合っていたと思うし、日に日にテンポがいい方向に盛り上がって行った

自画自賛

愛之助さんもそう思ってくれていたらいいな

ちなみに、その「芳流閣の場」では、幕切れに龕灯返しと云う、大屋根の舞台が後ろに九十度引っ繰り返る場面転換がある

そこで、愛之助さんと僕も見得をした形のまま、裏に引っ繰り返って落ちて行く

「何か掴まる所が有るのか」とか「ストッパーやベルトな物は何処にあるのか」等と、良く聞かれるが

種を明かすと、そんな物は一切無い

ただ、愛之助さんと僕が根性と脚力でひたすら踏ん張り、お客さんから姿が観えなくなるまで耐えるのみだ

結構、脛と足首に普段掛かるんだよ

我ながら、毎日、良く踏み堪え続けられた物だ

「これからも色々な芝居を演って行こうね」と、約束をして劇場を離れた

後輩達も大役を伸び伸びと演じていたし、皆が一致団結した意義の有った芝居だと考える

僕として唯一の不満は中村芝翫の兄さんとの芝居が少なかった事

正直、もうちょっと、演りたかった

それは、再来月、福岡は博多座での歌舞伎公演の楽しみに取っておこう

皆さんにも期待して貰いたい

プライヴェートでは折角、知り合いになって仲良くなれたのだから、SCUMにはもう一度、今月中に行きたかったな

さて

もう少し、思う所が有って、この日記の続きを書いて行きたいのだが

それを皆さんに読める様にするかどうかするかは、しばらく考えてからの事にする

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無くしたと思っていたデスラビットのライター
見付かった
嬉しい
先週、着ていたライダースのポケットに入っていた

ライターだけにライダースの中か
と云う事は、中村梅枝さん推薦の焼肉屋に、中村橋之助さん、中村福之助さん兄弟と、坂東新悟さん、坂東亀蔵さんと一緒に連れて行って貰った日の事なんだな
あの日は酔っ払ったつもりは無いのだが、自分が思っていた以上に酩酊していたのだな
僕と亀蔵さんのロートル二人組は午前2時半位には退散したのだけれど

年を感じるね
若者達はその後も午前七時、八時とかまで元気だったらしい

しかも、彼等は僕等二人が帰った後に、風呂付きのカラオケボックスに乗り込んだそうな

そんなカラオケボックスが在るんだね、想像出来ん

その風呂にお湯溜めて洋服着たままダイヴしたらしい

元気だよな

うん、本当に

末頼もしい

若いって素晴らしい
若さは金では買えないよ

この「若さは金では買えない」ってワード、今月の僕と亀蔵さん、そして、片岡愛之助さんの中で良く出るパワーワード

それはさて置き、兎に角はお気に入りのライターを無くしていなくて良かった、良かった

ちなみに、昨晩は終演後に亀蔵さんと二人で、馴染みの居酒屋デート

その後、名古屋の夜も残り少なくなったので、僕等が少年の頃から世話になっていて、今月も三、四回は観に来てくれたママがやっているスナックに挨拶がてら

さくっと軽く飲んで帰ろうと、二人で話していたら、店の外まで聞こえるNirvanaのカラオケ 

二人でニヤニヤしながら、店内に入ってみると、そこには予想通り、中村松江さんと中村玉太郎さんが

勿論、玉太郎さんは酒を飲んではいなかったし、亀蔵さんと僕は歌は歌わなかったけれど、四人とママ、店の責任者のお姉さん

そして、他のお客さん達と話が弾んでしまった

しかし、まだ、終わらない

盛り上がっている所に、今度は愛之助さんが元プロテニスプレイヤーの友人を連れて、偶然にも参戦

元プロテニスプレイヤーの方も僕の昔の知り合いだった事も有り、同窓会の様な様相に

結果、午前三時過ぎだったか

いや、楽しくて、軽く所の話ではなかったな

何がさくっとだか

その時

愛之助さんがCMをやっている桃屋の瓶詰めシリーズが手軽で美味しいよね、と云う話になり

僕も「結構、単体でもつまみになるし、家の冷蔵庫にも入ってるんだよね」と、言ったら

今日、楽屋で愛之助さんが穂先メンマやわらぎときざみしょうがを「東京で食ってね」とくれた

有難いね

また、冷蔵庫の中が愛之助さんテイストになってしまうな

さて、今晩は名古屋最後の夜

松江さん、玉太郎さん親子、亀蔵さん、新悟さんと待ち合わせて食事の前に、或る程度は荷造りをしてしまわないとな

B-CASカードを持って帰る事も忘れない様にしないと

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悲しい事件が

昨晩、中村松江さん、中村玉太郎さん親子と坂東新悟さんと、夜御飯を食べている時に気付いたのだが
ずっと、愛用していたお気に入りのライターを無くしたっぽい
デスラビットのマークの入った奴
どうやら、酔っ払って何処かの飲み屋に置き忘れたらしい

必ず、鞄の中の決まったポケットに入れていたはずなのに

どうしようもないので、昨晩はずっと、松江さんのライターを拝借しながら、煙草を吸っていた
嗚呼、かなりのショック
落ち込んでしまう
もう、見付からないだろうな
仕方無い
当分は今月、中村福之助さんにハワイの御土産に貰った、楽屋で使っているZIPPOを持ち歩く様にしようか
これは無くさない様にしなければ

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さて、昨日は昼の部一回公演
そして、今日は夜の部一回公演だった
つまり、間にほぼ一日、公演が無かった訳だ
なので、僕は昨日の公演終了後に東京に帰って来た
勿論、ちょっとした用事が有った訳だけれども、そんなのは直ぐに終わったし、口実に過ぎない
一番の目的は、東京に置き去りにして来た犬達三匹に逢う事
昨晩は一緒に遊び、一緒に寝て、久々のリフレッシュ
元気を少しだけ分けて貰い、家の仏壇にも手を合わせ
そう言えば、朝、起き掛けには俺々詐欺的電話が掛かって来たな
何で、一日だけ帰っているその日をピンポイントで狙って来るかな
あまりのタイミングの良さに笑っちゃったよ
こちらの苗字まで調べて騙ったはいいものの
居ない者の名を挙げて、トラブルを装い金をせびって来たのは随分と御粗末な筋だったね
初めての俺々詐欺体験だったので、騙されない様に気を付けつつも、頭の何処かで小馬鹿にしてしまいながら話を聞き、既に我が家に存在していない事を突っ込んでみると
辻褄が合わなくなって、面倒臭くなったのか、口篭って切りやがった
「役者騙そうとするなら、もっと深刻そうな芝居の稽古しとけ」って、家の犬達三匹も足元で嘲笑っていたよ
所詮、他人の金をちょろまかして、楽して稼ごうとする、せこい犯罪者共
賢い訳が無い
確かに下手糞で頭の軽い、馬鹿な奴等だった
話を戻そう
そんな、ハプニングも有りつつ
正午過ぎには新幹線で名古屋に戻って来た
列車ジャック等の遅延無く無事に着き、今晩の公演もさっき、恙無く終わった
計画通りに進められた、有意義なインターヴァル
残りの後半戦も我々、舞台サイドの方は千穐楽まで、来て下さるお客さんに喜んで貰える様に毎日、一生懸命勤めたいと、改めて気持ちを一つにしている
今から、坂東亀蔵さん、坂東新悟さん、中村福之助さんと景気付けに寿司を食べに行って来る

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今日は終演後に片岡愛之助さんと晩御飯
中村松江さんや中村橋之助さん達も一緒
昔、若い頃は愛之助さんとも、中村亀鶴さんとか、松江さんと共に毎晩の様に朝まで飲み歩いていた物だけれど
最近は一座する事が少なくなったからな
自然と終演後に飲む食事、なんて云う事も少なくなった
パーティーとかでは軽く飲むけれど、今晩の様に、約束して、しっかりと腰を落ち着けて飲もうと云うのは、いつ以来だろうかね
本当に久し振りで、楽しみだ
そして、明日は昼の部だけの一回公演
本公演が終わった後に、今年七月の国立劇場での歌舞伎観賞教室の宣伝写真を撮る

「菅原伝授手習鑑」、しかも「吉田社頭車引の場」の舎人松王丸の化粧って難しいんだよな

あの二本隈って、今までに取った事の無い隈だし

癇筋も眉毛の反りの内側に取る人と、眉毛の反りの延長に取る人が居る

家の祖父や、先代の松本白鸚の叔父、当代松本白鸚の叔父、中村吉右衛門の叔父、中村芝翫の兄さんとかは大体、眉毛の反りの延長に取っている印象が有る

また、中村又五郎の兄さんや十代目坂東三津五郎の兄さん、先々代市川團十郎の叔父、先代市川猿翁の小父さん等は眉毛の内側に癇筋を入れていらっしゃる

先代の市川團十郎の叔父は両方の写真が残っている

さて、僕の顔にはどちらの方が乗るかな

これは追々、公演の初日が開いたら、両方試してみる事にしよう

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やっぱり、お客さんの目は確かで逃れられないね

家の番頭から「此処数日、前の方で観て下さっていたお客さん達が『目が充血している風に思える』との意見が有った」と、言われてね

確かに、今月、初日開いて直ぐ位から、右目が充血しているのだ

平均すると毎日、五時間程度は寝ている計算になるから、寝不足でないのは明白

決して、酒の飲み過ぎではない

かな

多分

今は随分と良くはなった物ものの、一時期は右の白目の粘膜がぶよぶよと、目を閉じても上瞼と下瞼の間から少しはみ出る位に爛れていた

これは流石に驚いたね

白目の血管が切れたのか

その一番酷い時でも、視力の低下や痛みは感じなかったので

心配ではあったけれど、しばらくはコンタクトをやめて、頻繁に目薬を点していたら、快方に向かっている

でも、まだ、完治ではないな

明後日は一回公演だから

一応、様子見に眼科に行って来るか

何かのアレルギーなのかな

それとも、何かのストレスが身体に訴えていたのかしら

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先月末に名古屋に来てから、休肝日は無し
毎晩、誰かと御飯を食べ、飲みに出ているので、昨日、今日は久々の一人行動
昨晩は、去年の十月から気になっていた肉バルに、調査がてら一人で潜入
なかなか、いい店だったし、出て来た食べ物もいい感じ
特に、スペアリブとホタルイカのショートパスタは美味しかったな
昨晩はラストオーダーが二十二時と云う事で、そんなに深酒しなくて済んだし
また、顔出したいと思う
今日は、昔から馴染みの、御園座近くの居酒屋で一人飲み
その店は、一ヶ月の内に多い時には六、七回は行く、落ち着く店
刺身も焼き物も相変わらず
今晩はホタルイカとサヨリの天麩羅が絶品だった
結局、昨日も今日もホタルイカ尽くしでしっかりと飲んでしまったな
日が変わらない内にホテルに帰って来た
さて、缶チューハイ飲みながら、本読むか

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今、坂東亀蔵さんや後輩達と、終演後に御飯食べて軽く飲んで、帰ろうと思ったら

中村松江さんに僕一人だけ拉致された

へヴィメタルバーで二人飲み

歌舞伎役者の中でへヴィメタルを語り合えるのはこの男だけだし

僕が人生でただ一度だけミスター・ドーナッツに入った時も、付き合わせたのはこの男だった

今晩はへヴィメタルでも聴かないと眠れないからな

そりゃ、付き合うしか選択肢は有るまい

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さて、今年五月からの新しい元号が令和に決まった今日
こちらは名古屋に於いて、御園座陽春花形歌舞伎、通し狂言「南総里見八犬伝」の初日が開いた
去年十月以来の名古屋
前回は「もしや」とは、思っていたが
「まさか、半年の間には改善されるだろう」と、静観していた問題が全く進歩しておらず

相変わらずの、貸し小屋かの如き他人事な雰囲気が劇場表に満ち溢れ過ぎている
初日にして、懸念は現実となり、今の劇場運営方の地力と限界
そして、緩さを或る意味、痛感させられているけれど
何と言っても、去年、生まれ変わったばかりのまだ赤ん坊
先ずは劇場の成長を見守る時期、私情は横に置いて、そうしたい

ただ、見守る時期も、そうは長くは取れない

この甘っ垂れた状態をそのまま続けるのであれば、御園座は、遅かれ早かれ消滅するだろう

今の会長、社長を始めとした経営陣よりは、前の社長を頭とした体勢だった時の方が、まだ、遥かに真剣だったし、覇気と熱意が有った感触だ

どうして、こんな体質になってしまったのだろう

我々、舞台サイドは、いい作品を作ろうと、命を削って舞台に臨んでいる

運営サイドも、手に手を取って、同じ方向に向かってくれる様に、目が覚めてくれる事を切に切に願って止まない
その我々、舞台サイドの方は座頭、中村芝翫の兄さんをトップに、中村松江さん、中村梅枝さん、中村梅花さん、片岡愛之助さん、市村橘太郎さん、坂東新悟さん、坂東彦三郎さん、坂東亀蔵さん兄弟と
他にもディスカッション多く、いい雰囲気で稽古が進んで初日を迎えた
その方向で一日、一日と皆で成長しながら千穐楽に向かって行きたいと考えている
時に、僕が演じている役は犬飼現八信道
二度目だ
僕は里見の八犬士の中でも現八が随一に好き
ぶっちゃけると、一生、他の八犬士は演らなくてもいいと思っている位
「現八」と言って一番に思い出すのは、十二代目市川團十郎の叔父の現八だ
花道から駆け出て来た時の錦絵の様な美しさ
荒ぶる男らしさと匂い立つ様な色っぽさ
本来ならば、一つの中に同時に存在出来る筈の無い、相反する物の同居
あれこそ、曲亭馬琴が表現したかった現八その物なんじゃないか
自分を含め、あれに上超す現八を目の当たりにせずに、僕は死を迎える事だろう
それでいい
それ位、ただひたすら、格好良かった
荒事等も素敵だったけれど、十二代目團十郎の叔父と云うと「慶安太平記」の丸橋忠弥、「三人吉三巴白浪」のお坊吉三
そして、この「南総里見八犬伝」の現八
僕は、そう云った役が一番最初に頭に浮かんで来る
前回、演じた時にも書いたかも知れないけれど、今回も成田屋の叔父の足元に一歩でも近付ける様に毎日を大事に演じる
また、現八は僕の中では「三國志」の張飛益徳に近いイメージを持っている
いや、厳密に言えば“もう少し思慮深い張飛”と云った所か
だから、自分で持っているそう云うニュアンスを少しだけ、役の中にスパイス出来れば大成功なんだがな
最後になった
今月からまた、我が一門に新しい家族となる弟子が入った
本名から一文字を残して、尾上貴緑の芸名とした
まだ、十七歳の少年
当たり前だが、僕の息子の方が全然、年が近い
きっと、一生懸命に修行をする事だろう
いずれも様には何卒、末長い御贔屓をお願い申し上げたい

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